「糖尿病」という国民病

雑記

驚くべき糖尿病の比率

男性19.7%、女性10.8%これは令和元年に厚生労働省の調査結果で判明した「強く糖尿病が疑われる人」の割合。それほど多い疾患である事が「国民病」とまで言われてしまう原因なのです。それなら、恐れる事のないありふれた疾患なのでしょうか?

合併症について

糖尿病の3大合併症は網膜症、腎症、神経障害です。リアルな表現に変えると「見えなくなり」「尿が出なくなり」「手足が壊死する」可能性のある病気です。

人工透析のある病院に勤めていた頃、私が日常的に見ていた糖尿病の方の中には、目が不自由で人工透析を受け、片足は切断され、毎日インスリンを注射している典型的な重症ケースが実際にありました。「切断」に至るショッキングなケースも決して珍しくはなかったのです。

人工透析は生涯に渡る治療だし、週に3回程3~4時間かけて血液を浄化する為、仕事はもちろん送迎や食事制限など、本人だけでなく家族の社会生活にも影響を与えます。

毎日の血糖チエックやインスリン自己注射、厳格な水分制限も続けなければ、安全な日常生活を送る事が出来なくなるのです。

ありふれてはいても、決して放置して良い病気ではありません。

原因は?

糖尿病は「遺伝」や「生活習慣病」(=2型糖尿病)という側面がありますが、自己免疫の不全で起こるものや原因不明のもの(=1型糖尿病)もあります。

1型糖尿病については若い頃から発病する事も多いですが、どの年代にも起こる疾患です。インスリンを追加し続けなければ自力で糖を摂取が出来ません。

2型糖尿病は、次に挙げる要因が極端に逸脱していたり、合わさってしまうと発症しやすくなります。つまり、高血糖状態が慢性的に継続している状態という事です。

炭水化物(パン・米・麺類・芋類・トウモロコシも=食物繊維を含む糖質)や糖質(甘い物・和菓子・洋菓子・アルコール)を常に必要以上に摂り過ぎている

運動不足による筋力低下・代謝の低下=運動量が足りないと筋肉量も低下し、摂り過ぎている糖質を効率よくエネルギーに変換出来ず使いきれなくなっています。糖尿病の発病は40代以降が多いのですが、活動量の減少もひとつの原因と言えます。

ストレス=ストレスは万病の元といっても過言ではありません。糖尿病の場合は過労や睡眠不足なども含め、さまざまなストレスが交感神経を刺激し、体内の血糖値を上げるホルモンに影響を与えるのです。

遺伝=近親者に糖尿病の人がいる場合遺伝リスクはありますが、これは家族など食生活や生活習慣が似ているから結果的に起こりやすいという側面もあります。

怖いのは低血糖

糖尿病は糖を適切にエネルギーに変える事が出来ない疾患。片や、脳は糖しかエネルギーとして利用できない特殊な臓器です。なので、脳はその活動が維持出来なくなると錯乱やけいれん発作を起こしたり、ついには意識を失ってしまい、自力でSOSすることも出来なくなります。

糖尿病になると血糖値が高くなり過ぎるのでインスリン注射をしたり、血糖降下剤を飲んだりするため高血糖の方が怖いイメージがあると思います。しかし、発症するとすぐに命に関わる重篤な状態に陥るのは低血糖の方なのです!

病院なら低血糖発作を疑う症状(冷や汗・動悸・手足の震え・倦怠感・強い疲労感など)を確認したら、血糖値をその場で測定して原因を突き止める事ができます。意識が無くとも注射などで糖を早急に補うことが出来るし、そのようなリスクのある人はあらかじめ点滴用のルートを血管にいれておき、重篤な低血糖発作に備えています。

しかし、病院以外の場所で重篤な低血糖発作で意識を完全に失ってしまっても、口から糖を補う事が出来ず、本当に命を失うことがあるのです。

糖尿病と診断されている人は指導を受けますが、手軽に摂る事の出来る糖質(ラムネや飴など砂糖の入ったお菓子)を所持したり、人工甘味料ではなく砂糖の入った市販のジュースを知っておくと役立ちます。

自分に低血糖発作を起こす可能性がある事を、日頃一緒に過ごす家族や職場仲間にも伝えておくと万が一に備えられます。緊急時の対応や方法(糖分の摂取やグルカゴン注射など)についても伝えておいて下さい。

もし糖尿病の人が目の前で意識を失ってしまったら、微量の水で溶いた砂糖を口の粘膜や歯肉に塗り付け、すぐに救急車を呼んで糖尿病の持病がある事を知らせてください。

教育入院の事

糖尿病は生活習慣病である確率が圧倒的に高く、早めに対処を始めれば防ぐことも、合併症を起こさず生活することも出来る疾患。

なので、生活習慣の改善が極めて重要であるため、糖尿病については通常の保険診療で「教育入院」というものがあるのです。

入院中提供される食事(理想的な食事量や内容を一定期間経験)はもちろんですが、その人に見合った適切な運動量を体験します。

そして、低血糖発作時の対応の仕方、様々なトラブル時(食べれない時やひどい下痢を起こしたりしている時など)の薬の飲み方、予防行動をしなかった場合に起こってしまう合併症や、その後生活をする上での注意点などを学びます。いわば糖尿病の勉強合宿のようなものです。

印象としては主治医や家族に勧められ、仕方なく入院して来る人が多いですが、この恐ろしい持病についてこれほど懇切丁寧に教えてもらえる事は他では体験できません。

仕事や子育て、家事などストレスの多い日常から離れ、闘う相手をしっかりと認識してその対処方法を正確に学ぶ意義は高いです。病院によって日数やプログラムは様々ですが、もし勧められたらぜひ前向きに体験し、健康管理に役立ててもらいたいと思います。

糖尿病は確かに国民病といわれるほど多い上に、様々な日常を奪う恐ろしい疾患。

しかし、生活習慣を改めると予防はもちろん、治療成績を自分で上げる事が出来る疾患なのです!

 

 

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