薬のあれこれ
病院でもらうお薬の事、今は処方薬には詳しいお薬情報が付いてくることが殆どです。ですが、看護師の仕事をしていると飲み方や処方の意味などを尋ねられる事が良く有るので、それらをご紹介します。
飲み方の意味
薬の効果を継続しようとする場合、薬によって1日3回毎食後や朝夕2回という処方がよくあります。薬の血中濃度を保つために〝定期的に〟飲んで下さいの意味です。
解熱鎮痛剤や高脂血症などの一部の薬は空腹時NGですが、大抵のものは「食後」の縛りについては〝飲み忘れの無いように〟との意味もあるのです。
高齢者など、食後に薬を飲むと口の中に残りやすい人などは食事中に飲んでもさしつかえは有りません。忙しくていつもの時間に食事が出来なくても〝食事位の時間に飲んでおく〟という事で大丈夫です。
しかし食前薬はあらかじめ食事前に作用を期待する薬(吐き気止め、血糖値を下げる薬など)が多いのです。胃の中に食べ物があると効果が弱まるものもあるので食事の30分位前に飲んでから食事をして下さい。
よく聞かれる食間薬についてですが、これは〝食事中〟では無く、食事と食事の間=〝空腹時〟に飲む薬。その方が吸収が良くなるものや胃粘膜を保護する意味がありますので正反対のタイミングに飲んでしまわないように注意して下さい。
タイミングについては「眠前」や「起床時」もありますが、週一回、月一回のものもあります。このようなお薬の場合は飲み忘れた時の対処が異なるので、自己解釈はせず、説明をよく読んで対処してくださいね。
頓服薬の飲み方
「頓服薬」とは発作や症状が起こっている時に単発で飲む〝一時薬〟の事です。飲む時間を指定されている薬の事ではありません。
解熱鎮痛剤以外にも下剤や心臓発作の薬、喘息吸入薬、不眠時薬などは利用する人も多い頓服薬です。
一般的な解熱鎮痛剤は最低限4~6時間間隔を空けないと血中濃度が高くなり過ぎ、良くない副作用の方が期待する作用を上回ってしまいます。なので一日に飲んでも良い上限の量も決まっているのです。くれぐれも間隔と回数については間違わないようにして下さい。
不眠時薬は飲む時間が遅くなりすぎると当然ながら朝まで薬の効果が残り、起きる時間が遅くなると昼夜逆転を起こし本末転倒な結果を招きます。病状や飲んでいる薬、不眠の蓄積度合いにもよりますが、睡眠薬を多用する精神科なら夜中の2時まで、一般的には日付が変わる位までに睡眠薬を飲むよう指導している事が多いです。
ニトログリセリンなど心臓発作の薬はそもそもいつでも飲めるように持ち歩きをしておかなければ意味が有りません。外出する時必ず持ち歩く財布等に予備を忍ばせておくといった工夫が必要です。
薬とは異なりますが、糖尿病の人の低血糖発作も緊急を要します。ラムネ菓子など手軽な糖分の持ち歩きや人工甘味料では無く〝砂糖〟の入ったジュースの種類を覚え所持しておくと良いと思います。
貼り薬あれこれ
貼り薬はもはや痛み止めの湿布薬だけではありません。
皮膚から穏やかに少しずつ吸収し、血管やリンパ管に入って効果を発揮します。食べれなくても、飲み薬を嫌がる人でも、眠っていても使える便利さがあります。
終末期の癌など激痛を持続的に緩和させる医療用麻薬や、認知症治療薬、心臓の薬にも使われます。気道を拡張して呼吸を楽にする薬などは小児科でも良く処方されます。
ただし、貼り薬が気になって剝がしてしまう人については触れない背部に貼ったりする工夫が必要です。毎日貼り替える薬なら日付を書いておくと良いですね。
同じところに貼り続けるとたまに痒みや皮膚の発赤が出る事もあるので、毎日少しずつ貼る場所を変え、剥がし忘れの無いようにして下さい。
飲み合わせについて
納豆は血液を固まりにくくする薬との相性が悪く、グレープフルーツも一部の降圧剤や高脂血症治療薬の作用を弱める可能性があります。
薬を飲むときの水分も、ミネラルウォーターはカルシウムやマグネシウムが薬の吸収に影響を及ぼす事があります。空腹で飲むのは良くないから、と牛乳を飲んで食後薬を飲む場合もありますが、効果を下げてしまう抗生剤もあり注意が必要です。
しかし、昔からよく言われる貧血の薬とお茶の飲み合わせについては改良が進められ、通常レベルの濃さや量なら、お茶で飲んでも影響が出にくくなっています。
注意すべき薬は大抵の場合、飲み合わせの情報も記載されています。お薬をもらったら飲み方の欄だけでは無く、必ず説明の所も目を通してくださいね。
最近では、ジェネリックなど作用が同じでも従来の薬と名前が変わっている場合も多いのです。薬については事前の知識をあまり過信せず、必ず注意書きをよく読んでから飲み始めるようにしてください。
お薬手帳も面倒がらずにもらったシールを貼っておくと、薬剤師さんが情報を遡って必要な情報を教えてくれる事があります。緊急入院する際も提出を求められる事が多く、医療機関にとってはとても重要な情報源となっています。なので、飲んでいる薬の多い人は特にご利用を忘れずに。
薬は、正確に使ってこそ強い味方になってくれる現代人の相棒です。上手くつきあって日々元気に過ごしましょう!
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