眠れないという悩み

雑記

療養を阻害する睡眠障害

入院中の患者さんから「眠れない」との相談を受ける事が良くあります。

入院中は手術やリハビリ、処置や検査など受けなければ回復に向かえないイベントが沢山あります。睡眠不足に陥るとそのイベントが効果を発揮できないばかりでなく、症状悪化することすらあり、良い睡眠は最低限確保してもらいたい療養条件のひとつです。

かく言う私も、看護師という仕事柄不規則な生活をしている為、寝たいタイミングで眠れず、悪循環に陥る事は良くあります。

睡眠障害はどう対処すべきなのでしょうか?

睡眠の役割

睡眠は疲労回復に欠かせないものですが、身体だけでは無く、心の安定にも寄与しています。なので、精神科では睡眠をしっかり取ってもらう事は大前提。不眠症でなくとも睡眠導入剤はよく処方されます。

他にも細胞を修復する成長ホルモンは深い眠りによって分泌されるし、睡眠は自律神経の乱れを予防します。そしてこれらが、免疫力を高める事にも繋がっているのです。

また、記憶の定着にも関与する為、寝不足で睡眠負債が定着すると勉強や作業効率は落ちてしまい、本末転倒となってしまいます。

睡眠の平均値と必要時間

病棟の消灯時間は早いのです。だいたい21時~21時半位が多く、患者さんには基本寝ていただくように個室の電気を消して回ります。眠前薬はその30分前位に、トイレの見守りが必要な方も消灯までには終わらせておくようにします。

朝の検温も7時半位までには済んでいる事が多いのですが、それでも9時間以上は睡眠をとってもらえる事になります。

しかし、そもそも自宅で毎日9時間寝ている人は極少数派。睡眠に必要な時間は個人差が大きく、年齢によっても少なく変化していくものです。

とある調査によると日本人の平均睡眠時間は世界最短との結果もあり、複数のデータを見ても6時間半に及びません。

データとしては死亡リスクが最も少ないという点と、最低限の推奨時間という点で「7時間は必要」との数値があがっています。

ただ、療養中の場合は非日常的な状態です。やはりしっかりと多めに、規則正しく寝ていただく事を基本にします。病院では、長さだけではなく中断のない良質な睡眠がとれるよう援助しています。

入院中でも自宅でも「日中眠気で困らない長さ」が必要睡眠時間であり、眠り過ぎも良くない事が知られています。

睡眠を阻害するもの

不規則な生活:毎日通勤している人より、在宅ワークをしている人の方が睡眠の質が悪いとの調査結果があります。朝食の有無や入浴など、日常生活習慣の日々の繰り返しが睡眠に向けての準備に繋がっており、体内リズムを構築している要素ともなっています。

長時間在宅:外出をしない=陽射しを浴び無いという事。太陽の陽射しを浴びると睡眠を促すホルモンが14時間後に再分泌されるようリセットされ、代わりに覚醒を促すホルモンが分泌されます。陽射しは体内時計にも大きく影響を与えているのです。

ストレス:例えばストレスで心身が疲労困憊している鬱病の人は、じっと引きこもっていたり終日臥床したままという事も珍しくありません。ですが、「眠れない」という主訴はとても多いのです。

自律神経はリラックスモード=副交感神経優位、にならないと睡眠を促してはくれません。逆の交感神経優位というのは本来生物として戦闘モードの時に機能させるものであり、ストレス過多の時は交感神経が活発に働いている状態だから眠れないのです。

薬の副作用(薬剤性不眠):血圧の降圧剤、高脂血症治療薬、抗パーキンソン薬など、副作用として不眠を起こす薬は意外に多いです。

薬と共にもらう薬剤情報に、不眠を起こす可能性があると書かれているものもあります。もし変薬の後に不眠が続き始めたら、薬の副作用の可能性もあるので主治医や薬剤師へ相談してみて下さい。

アルコール・カフェインなどの嗜好品:これは周知の原因ではありますが、一般的なレギュラーコーヒーと比較すると、同量ならば紅茶はその半分、緑茶なら1/3程のカフェインが含まれています。なので入院中に飲む緑茶でも、沢山飲む場合は不眠の原因になり注意が必要です。

アルコールは睡眠導入にはなるのですが、眠りそのものは浅くなります。利尿作用もあるので中途覚醒する可能性も高くなってしまいます。耐性もあり、毎日飲むなら量を増やさなければ眠れなくなる弊害もあるので結果的に不眠になりやすいと言えるのです。

眠るための工夫

前述した睡眠阻害の要因を参考に、睡眠を意識した生活をしましょう。

①できるだけ7時間眠れる時間を作る

②自分が眠りたい14時間前に陽射しを浴びる:電灯の灯りと陽射しでは照度がまるで違うので室内で起きているだけなら効果なし!窓際でも良いので陽射しを浴びてください。

朝食をとる:朝体内リズムを刺激する生活習慣としても、脳に栄養源を注入して覚醒を促す為にも毎日朝食を摂るのはおススメです。量の調整はお好みですが、脳は糖分しか栄養源に出来ない臓器なので炭水化物か糖質も摂りましょう。

入浴を上手に使う:入院療養中は使えませんが、シャワーでは無く入浴で身体の深部体温を上げましょう。その後時間と共に体温が下がっていくと副交感神経優位となるので、この波に乗れば眠りやすくなります。私も勤務に合わせて取り入れ、効果を実感している方法です。

リラックスモードを作る:副交感神経優位にする為に、自分のくつろげる環境を作ります。灯り、静けさ、穏やかな音楽、アロマ、明日の準備を終えておく等。

眠れなくても、眠れない事を気にする事で悪循環が生まれます。「仕方ない」「こんな日もある」と諦め、リラックス出来れば、副交感神経は再び優位になってくれます。

睡眠薬やサプリメント:日常生活に支障を来たす程の不眠が続く場合は病院に相談を。精神科や心療内科が専門です。ただし、入院中は精神科で無くとも処方されるので看護師にお尋ねください。

在宅中なら最近は睡眠に効果のあるサプリメントも出ていますね。実は「何か対策をしている」という自己暗示も、味方となってくれるのです。

 

最近使われるようになった「睡眠負債」という言葉。これ程大事な睡眠なのに、睡眠不足は睡眠でしか補えないという注意喚起が込められた表現なのかも知れません。

しかも、睡眠は事前の寝溜めが出来ないばかりか、眠り過ぎると生活リズムを崩し、更なる睡眠障害に陥る事があるのです。

「睡眠負債」は少ないうちに返済しないと、療養や健康を阻害する形で取り立てられることがあるのです。

 

 

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