誤嚥性肺炎の回避①

雑記

死亡原因第7位

若い時にはほぼ起こらない〝誤嚥性肺炎〟という疾患。

しかし、高齢になると日常的にリスクが存在し、死にもつながる恐ろしい疾患です。

2020年の統計でみても、死亡原因第7位(肺炎は5位)に位置します。

では、そのリスクをどうやって回避すれば良いのでしょうか?

誤嚥性肺炎リスクのサイン

嚥下力(飲み下す力)も歳と共に老化をしていきます。在宅で生活している高齢者も多数おられるので、そのサインを知っておくとリスクの回避に役立ちます。

病院療養中の高齢者でよく見かける代表的な兆候は以下の三つ。

あまり水分を摂りたがらない:水分でむせてしまい、苦しくなるから水分を好んで摂らなくなる

食事に時間がかかる:飲み込みが一度では済まず、何度も飲み込まないと喉がスッキリしないから疲れてしまい、時間を要するようになる

食事中や前後の話し声が濁る:飲み込みのキレが悪いので、食道や気道の入り口付近に唾液や残渣物が残り、クリアな声が出せない

などがあります。

食べやすさの工夫

病院や施設では、嚥下力や咀嚼力(かみ砕く力)が落ちている方のために、食事形態を何段階にも分けています。例えば、

常食⇒軟菜食⇒荒刻み食⇒刻みトロミ食⇒ゼリー食⇒ペースト食 など、

各施設によってその段階や種類は様々です。嚥下力や咀嚼力にもレベルがあるので、その人に応じたベストの食事形態を見つける事が大事になります。病院なら専門のセラピスト(ST:言語聴覚士)が在籍している事も多く、その判別をしてくれます。

しかし、在宅療養の場合はそうもいきませんよね。ご家庭で療養中の高齢者に上記のような兆候がある場合、まずは水分にトロミをつけて(火を通さずとも後から水分や汁物にトロミを付けられる市販のトロミ粉があり便利です)提供し、むせ込みが軽減するかどうかチエックしてみて下さい。

それで軽減するようなら嚥下力が低下してきていると考えて食事形態を下げて(前述の病院や施設の食事形態の調整を参考に荒刻みのトロミ食からスタート)提供するようにしましょう。

中には義歯が合わなくなったり、口の中のトラブル(嚥下力ではなく、咀嚼力の一時低下)が原因で食欲が落ちているだけのケースもあります。

チエックをせず食べる事に自信を無くしている方に、最初から元の食事が何だったのかわからないようなペースト食を出すのはNG!食べる意欲を失い、更に食べなくなってしまうというのはよく聞く話なのです。

食事形態を変えるのは、在宅ではなかなか難しいかも知れませんが、おかずを細かく刻んだものに薄味の万能トロミだしであんをかけておくだけでも、食べやすさを変える事が出来ます。だしをコンソメに変えれば、洋風のおかずにも使えますね。

カロリーだけではなく、様々な栄養を強化している市販のゼリーを補助食(食後のデザートやおやつ)として使う方法も、どこの医療施設でも使われているので、在宅でもすぐに真似が出来ますね。

更には、介護食の作り方動画がYouTubeで無料で公開されていたり、介護食を手軽に作れる専用家電まで市販されています。介護食を作る側の方も、毎回ガッツリでは無く適度に休憩をはさみながら、簡単に出来る方法を採用してトライしてみて下さいね。

食べさせ方の工夫

まず食べる時の姿勢についてですが、基本は椅子に深く座らせるか、ベッドの頭部を高めに上げ、枕やクッションなどを使って顎を引いた姿勢をとります。顎を上げてしまうとむせ易くなるので、食事介助をする人も、目線を合わせる位置から食事介助をするのがベストです!

そして、しっかりと起きてもらうこと。眠たい意識のまま食べるとむせ易くなります。「顔を拭いてあげる」「入れ歯を入れる」など、刺激しながら声掛けし、しっかり覚醒を促すことが大事です。

更に、食べる直前にまずは水分(お茶やトロミ茶)を一口飲んでもらい、口の中全体を潤し、唾液の分泌を促してから食事を開始します。その時にむせるようならトロミ具合や、食事の形態を再度見直します。

他にもいろいろ注意点はありますが、ご家庭等の在宅生活なら、これだけでもむせる頻度は変わっていきます。

要は「食べる前の準備が大事」という事なのです。

むせてしまったら

食事中、いきなり咳込み始めたら、慌てて水を飲まそうとするケースがありますが、嚥下力が落ちている高齢者にとってはこれは逆効果!むしろ悪化させてしまいます。

病院ではこんな時、鼻や口からチューブを入れて吸引し、気道内をクリアにします。ですが、在宅では難しいので、先ずはしっかり咳払いをしてもらうように声掛けし、咳が出なくなるまで繰り返す事が大事!介護者がそばで大げさに実践して見せ、真似してもらうのが効果的です。

そして、咳が止まったら声を出してもらい、声が濁る事が無ければ、お茶やトロミのついた水分を一口だけ飲んでもらってもうむせ込みが出ないか、確認してから食事を再開します。

むせ易くなっている状況で確認を怠り、いきなり食事を再開してむせてしまったら、食事は本来の「食道」ではなく「気道」に入ってしまいます。

これこそが〝誤嚥性肺炎〟を引き起こしてしまうので、注意が必要な場面なのです。

なかなか治らない時は食事を中断する方が賢明です。何故ならそれは「ただのむせこみ」ではありません。〝誤嚥性肺炎〟に直結しかねない、注意すべき「症状」のひとつと捉えるべきだからです。

この経過を繰り返す時は、既に〝誤嚥性肺炎〟を起こしている事もあります。高齢者は疾患が悪化していても、発熱等の典型的な症状が出ない事も多く、気づかれにくいのです。

他に目立った症状が無くとも、病院受診をし相談してみる事をお勧めします。

 

 

 

 

 

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