高齢者の転倒について

雑記

高齢者の転倒は命取り?

小さい子供はとにかくよく転びます。あちこちに擦り傷を作り、これでもか!というくらいに頭をぶつけ…を繰り返していますが、ほとんど大事には至りません。

では何故、高齢者の転倒はそれ程怖いのでしょうか?

高齢者の抱えるリスク

小さい子はとにかく身体が柔らかです。まだ身体のバランスが悪くて頭も重いけど、立ち歩いても地面との距離が近く、結果的に転倒しても衝撃は少ないのです。

更に小さい子供である程、見守りの目も有り、事前に食い止められている転倒も多くなります。

そして、その真逆が高齢者なのです。

関節も身体も硬く、成人なので地面との距離が有り、衝撃は大きくなります。当然一人で出歩くし、核家族化で独居の方も多いので、いつも見守りの目が有る訳ではありません。

足腰の筋力低下だけでは無く、視力や聴力の衰えも危険予知能力の低下につながっています。

夜間の転倒リスク

例えば、入院中や施設入所中の方で見てみると、高齢者の転倒が多い状況のひとつに夜間のトイレ前後というのがあります。

高齢者は若い人よりも、病気でなくとも中途覚醒が多く、朝まで眠れる人の方がずっと少なくなっていくもの。眠りそのものが短く浅くなっています。

そこへほぼ必ずと言っていい程の頻尿が加わります。若い頃よりも柔軟さを失った膀胱は早く尿意を自覚してしまうのです。

更に見えにくい目、寝起きのふらつく足やボーッとした意識、時には痛む足腰をかばい、尿意も我慢しながら夜間何度もトイレへ向かいます。

しかも夜間はスタッフの数が少なく、遠慮深い高齢者は、気を遣ってナースコールしない人も多いのです。

本来これ程のリスクがある状況なら、夜だけはオムツを使ってでも危険回避と療養のために朝までしっかり寝てもらいたいところです。

実はその状況を見越して、最初からその人専用の睡眠薬が処方がされている事も多いのですが、高齢者には安易に睡眠薬を使えません。

熟睡からの寝起きは、ふらつきの悪化など悪影響が更にひどくなり、転倒リスクが高まってしまうからです。

もちろんこれは、在宅の高齢者でも同じことが言えます。

転倒したら

いちばん怖いのは頭部打撲ですが、骨粗鬆症を伴いやすい女性は、転倒すると大腿骨頸部骨折(股関節の骨折)を起こし易い特徴があります。

時には人工関節を入れる手術を受ける事にもなり、療養が長期に及ぶので、足腰の筋力の衰えが取り返せないレベルに陥り、寝たきりとなるケースも多いのです。

そして活動範囲が狭くなると引きこもりがちになり、刺激の無さから認知症へ進んでしまう悪循環を招き易くなります。

独居の場合は転倒事故を誰にも知られないため、後から時間差で脳出血したり、動けなくて脱水状態で発見され、救急搬送されるケースもあるのです。

解決策は?

夜間のトイレを例にあげますが、転倒リスクを減らすコツは手間を減らしてその場で完結させる事。

ポータブルトイレ・ベッド柵・手すりの設置、夜間の灯りの確保、障害物の除去、履物の工夫(スリッパはやめて敷物を敷いておくだけにする・滑らない靴下など)

更に、今のオムツは優秀なので、夜間だけオムツ内排尿にするという方法もあります。

大き目のパッドを中に追加すれば、途中寝たままパッドを一枚取り除く(女性の場合は引き抜く・男性は巻いたパッドを交換する)だけで朝までベッドから降りることなくトイレを安全に済ませる事だって可能です。

そして枕元に飲み物、携帯電話や防犯ブザー、ティッシュやごみ箱、トイレットペーパーの予備もそばに置いておく。

更に、そこへ加えておいて欲しいのが時計。目覚めの早い高齢者は、よく時間を気にしている為、時計を見るために動く事も多いからです。

あと、ポータブルトイレの設置位置も、ベッド柵に片方の手をかけながら移動出来る「近さ」や「角度」が大事です。

病院などではその「ちょうど良い位置」を床にテープでマーキングし、誰でもいつでも、ベストポジションにトイレが動かせるよう工夫されています。

センサーあれこれ

もう一つ解決策として、現在病院や施設で多用されているのがさまざまな機能を持つセンサー。

利用者がベッドから起き上がると別室にいる誰かに音や音声で通報してくれるものや、利用者の衣類にクリップでとりつけておいたセンサーピンが体動で外れる事で知らせるタイプの物、赤外線がとあるルートを遮断することで鳴るタイプのものなど様々です。

病院ではこれらのセンサーがナースコールに連携しており、利用者の危険な動きを早めに知らせてスタッフが駆け付けたりしています。

現在は家庭用のものや、携帯へ連携できるものなど種類はさまざまです。まだ値の張る買い物ではありますが、需要は高まってきており、転倒による大けが回避グッズとしては背に腹は代えられない為、準備するご家庭もあるようです。

若い頃は「たかが転倒」で済むのですが、高齢者になると、そのリスクの高さと結果の深刻さは段違いに大きくなってしまいます。

命は奪われずとも命の質が奪われるという事は、先行き短い高齢者にとって「命を失うのと同じくらいの損失になる!」という意味なのです。

 

 

 

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