バイタルって何?
バイタルサインは「生命兆候」と訳されます。医療を扱うドラマの中でも「バイタル」という言葉は多用されるので知っている人も多いのかも知れません。看護師が検温の際に測定している体温・脈拍・血圧、最近では酸素飽和度も含めた値の事です。
高齢化や在宅療養の増加という社会背景により、体温計だけでなく血圧計やパルスオキシメーターまで所有しているお宅が増えてきました。正しい測定の仕方や注意点をお伝えします。
体温
最近はデジタル式が一般化しましたが、実をいうと水銀式に比べると精度は落ちると言えるかも知れません。
何故なら短時間で測定出来るものは予測式だから。なので、測り方を間違えると随分差のある結果が出る事があります。
デジタルでも長く時間がかかる実測式の方が利便性は劣りますが、より正確な値が出せるのです。なので私も職場で検温に行く時は実測式と両方を持ち歩き、怪しい時は実測式で再検します。
そして、これは実感している事ですが、高齢の方のほとんどは体温計のアラーム音が聞こえてはいません。高齢の方はあの小さな音では聞き取れないのが普通なのです。なので、体温計に表示されている測定時間より少し長めの時間、時計を見ながら挟む習慣をつけてもらうのがベストです。
以下、良く気づく注意点です。
*脇の下に挟むというより下から突き刺すイメージで!
やせ型の人に多いですが、ただ挟んだだけでは脇の下に空洞のくぼみがあって正確に測れていない事がよくあります。脇の中央のピンポイントに体温計の先端を下側から当て、反対の手で落ちないように腕を抑えて下さい。測定側の手のひらを上に向けると自然に脇を引き締める事が出来ますよ!
*汗かいてませんか?
濡れていると正確な値になりません。乾いた布で拭ってから測定を!入浴後直後や動いて汗をかいた後はまたすぐに汗が出てきてしまうので、少し時間をおいてくださいね。
*毎日測るなら同じ時間で
体温は睡眠時に下がる傾向があります。婦人用の基礎体温などは口中で覚醒直後など毎日同じ時間で測定します。体内リズムが全く異なる状況下で毎日の体温を比較するのはNG!
ちなみに予測式の体温計も、そのまま長く挟んでいると(10分程)実測式として利用出来るものも多いのです。機種にはよりますが、心配な時は長く測定して実測値が把握出来ると良いですね。
血圧
体温同様、血圧も一日の中で変動していくものです。睡眠モードに入っていると副交感神経優位になり、血圧は低め。しっかりと覚醒した日中であれば交感神経優位で高めになります。なので、高い時間や低い時間ばかりで測定せず、出来れば両方の値を把握できるのが良いですね。
正常値は一般的には上の血圧が140未満・下が90未満ですが、食直後は消化に血流が集中しているタイミングなので避けて測定するようにして下さい。
薄めの衣類なら上から測定しても大丈夫ですが、腕まくりをしてなるべく直接測るのがベストです。
注意点は以下のとおりです。
*こんな時の測定はNG
実はトイレを我慢している・痛みがある・暑すぎたり寒すぎる時・睡眠不足など。原因を取り除き、ゆっくり大きく深呼吸をして楽な姿勢で測定を!
*心臓の高さで
腕に巻くタイプではなく、手首式のものは高さにあまり注意を払わないかも知れません。
横向きに寝転んで上の腕と下の腕を測定するとわかりますが、血圧は高さで明確に数値が変わります。「心臓の高さと同じ」を意識して測定しましょう。
*巻き方を正しく
緩すぎてもキツ過ぎても正しい測定値にはなりません。大人用で子供を測定するのも、カフと呼ばれる巻き付ける部分のサイズが合わず不正確です。自分で測定する場合なら、隙間の無いように軽く巻き付ける位が程よい感じです。
脈拍
血圧計も酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターも、同時に脈拍値を表示します。表示されるのは1分間当たりの予測値なので、可能なら自分で脈を探して実測してみてください。
脈拍の正常値は60~100回/分ですが、その時に不整脈が続くならそれも大事な情報です。乱れが多い時や胸の違和感・痛みが伴うなら、その時の血圧値と共に主治医に伝えて下さい。
運動後・入浴後だけでは無く、発熱時や呼吸が苦しい時、薬の影響でも頻脈になります。
酸素飽和度
最近急速に普及したのがパルスオキシメーター。手軽に酸素飽和度が測定出来てしまう優れものです。主観では無く、客観的に酸素が足りているかどうかを判定する測定器です。
指の動脈血がどれだけ酸素を保持しているかを、指の動脈血に光を当て、透過した光を解析して数値を表示しています。
低いと慌ててしまうパルスオキシメーターのSPO2値。低い時に注意すべき事は以下の通りです。
*指は冷たくありませんか?
動脈血がしっかりと感知出来なければ数値は実際よりはるかに低い数値を表示してしまいます。寒くて血管が引き締まっていると正確に測定出来ないので、通常体温レベルに温め、測定部位の温度が安定してから測定してください。
*正しく装着されていますか?
一般的なパルスオキシメーターは爪の付け根辺りに光を当てて測定しています。それより浅くても深くても不正確です。無意識に外したり嫌がったりする人を測定する時は、一定時間付き添って安定してからの数値を確認して下さい。
*深呼吸をしてみましょう
数値の表示がすぐに出る人と時間のかかる人がいます。数値が少しずつ上がって落ち着くまでの間、しっかりと待って安定してからの数値を見てください。
少し低くても深呼吸をして復活出来るレベルかどうかも試してください。深呼吸で数値が上がるなら大丈夫ですが、それでも上がらない時、唇の色が悪く呼吸がいつもと異なる時(浅い・速い・乱れるなど)は本当に低い可能性が高いです。
しかるべき連絡先に、いつ頃からそのような状況が続いているか、数値の幅はどれくらいかを知らせて下さい。
*適正値とは?
一般的には96~99%が正常値ではありますが、呼吸器疾患があったり、在宅で酸素を吸っている人の適正値は異なります。数値を上げるために高濃度酸素を利用してはいけない場合もあるので、その場合の適正値はその人の病状によってそれぞれ主治医が判断し、本人や家族に知らされています。
*その他
他にもむくみや、爪白癬がひどくて正確に測れないケース、屋外など機械に強い光が当たるケースなども正確な値を表示できません。
また、最近急速に医療現場で問題になっているのが取れないネイルをしているケースです。除光液などで簡単に落とせ無いため、緊急時は直接動脈からを採血をしなくてはならないのです!一刻を争う事態の時はこれがあらゆる指示を出す医師の手を止める事になり、困難を極めます。
入院を予定されている方、呼吸器に持病のある方はネイルは外すか簡便なものにしておきましょう!
健康な人が運動中に息苦しいと感じてもSPO2の値が正常であるように必ずしも「息苦しい=SPO2低下」ではありません。
数値が低くても本人の唇の色も良く呼吸も落ち着いているなら、落ち着いて上記注意点をチエックし、機械の電池交換を!交換用の電池はパルスオキシメーターのそばに常備しておいて下さいね。
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