低血圧と貧血

雑記

似て非なるもの

頭痛・動悸・息切れ・めまい・疲れやすさなどよく相談を受ける事があるのですが、共通の症状が多いせいか混同されがちな低血圧と貧血。

高血圧は中高年に多く、低血圧は若い女性に多い特徴がありますが、貧血は高齢者にも多い共通のものです。

そもそも別々に取り扱われるべきものではありますが、原因も対処もそれぞれなので、対比しながらの方が違いが明確になり、わかりやすいと思うので比較形式でまとめてみます。

どうして起きるの?

【低血圧】「高血圧」でもお伝えしたように、血管をホースに例えるとすると低血圧はホースに少ししか水が通っておらず、ホースはふにゃっと弾力がありません。当然水は勢いよく遠くへ飛ばす事はできないので、広いお庭に水をまんべんなく撒くには役不足です。

ただ、流れている水質には問題がありません。水を血液に置き換えると各組織にまんべんなく血液を届けるには勢いが足りない。けれど血液そのものはちゃんと酸素が十分に満ちているという状態です。

【貧血】ホースにも水流にも問題はないのですが、水質に問題があります。

血液中に含まれている酸素(ヘモグロビン量)が不足している状態なので、量は足りているのに酸素の薄い血液が各細胞に届けられているため役不足なのです。

ただ、どちらにも共通するのは、身体の各細胞に届かなくてはならない酸素が結果的に不足するという事です。

種類とその原因

【低血圧】大きな分類では慢性持続性低血圧起立性低血圧急性低血圧に分かれます。

日常問題になりやすいのは起立性低血圧。立ち上がり時や長時間起立していた際にめまいなどの症状が起こりやすく、「脳貧血」とも呼ばれてしまうため、これが貧血と混同されやすい原因です。

自律神経の失調が原因ともいわれますが、似た状況を繰り返す他の疾患もあるため、鑑別は必要です。

慢性のものは更に低血圧になる原因疾患が明確にある症候性低血圧と、原因不明の本態性低血圧に分かれます。

更には食事性低血圧というものもあります。消化のために一時的に消化管に血流が集まるため、このタイミングでのみ脳への血流が不足し、起立性低血圧を起こし易くなるというものです。

急性低血圧は心筋梗塞や大量出血、アレルギーによるショックなど、血圧維持のポンプ作用をしている心臓に緊急事態が起こっている場合や、血圧を維持する血液量を維持できなくなった時等であり、まさしく生死にかかわる状況のケースです。

 

【貧血】最も多い代表的な物は鉄欠乏性貧血。鉄分の不足(出血など)や、吸収障害(胃切除など)需要増加(妊娠・出産・授乳など)などで起こります。

ちなみに女性に鉄欠乏性貧血が多いのは、月経で定期的に血液を失う事や、食生活がダイエットなどで偏りがちな事、出産や授乳などのライフイベントで貧血に陥りやすい状況が多いから、なのです。

他にも、腎臓由来の腎性貧血、鉄分だけでなく、ビタミンB12や葉酸の不足でも起こる巨赤芽球性貧血などもあります。

血液の寿命が通常より早いためにヘモグロビンが足りなくなる溶結血性貧血は、特定の病気ばかりではなく、マラソンなどでも引き起こされる事があります。

あとよく知られているのは血液の癌で引き起こされる再生不良性貧血など。貧血による酸素不足は原因が様々です。

原因に関わらず過度の貧血は内服薬レベルでは治療が追い付きません。病棟看護師をしていると重症貧血が判明したため、本来の治療目的を中断して輸血を開始する場面には度々遭遇します。

貧血はそれほどに治療の優先順位が高い状況なのです。

対処法

低血圧も貧血もよく耳にする症状が多いですが、やはり受診をして原因の特定を優先させます。

明らかな出血が原因の貧血なら、早く原因や場所を特定しなくては悪化する一方です。低血圧も原因となる疾患が有る場合はその病気の治療が始まらない限り、症状を繰り返して思わぬ事故に巻き込まれるかも知れません。

【低血圧】今や家庭でも血圧が簡単に測れるので、血圧が低くなりやすい朝や眠前と、食後を除いた日中の血圧を数日記録して観察してみて下さい。水分不足による脱水や、過度な塩分制限をしていないかも原因となるのでチエックしましょう。

実は低血圧には数値的な診断基準が無いのですが、WHOの指標としては上が100㎜Hg、下が60㎜Hg以下とされています。測定値がいつもこの指標より低く、冒頭に書いた症状が日常生活に影響を与える状況であれば受診して原因解明する事をおすすめします。

もし低血圧が原因と思われる立ち眩みなどの発作的症状が出たら、可能なら臥床する・頭の位置を低くする・立つときはゆっくりと動作を行う・歩き始める時も症状が治まってから何かにつかまりつつ一歩を踏み出すようにして下さい。この場合、慌てて助け起こすのはNGなのです。

そして、怖いのは転倒による二次的な事故。意識を失い、防御動作(とっさに何かにつかまるなど)が全く加わらないまま転倒してしまうと、打ちどころや転倒場所によっては不幸な事故につながります。

【貧血】一般的な健診項目には必ずヘモグロビン濃度(Hb)・赤血球の割合を示すヘマトクリット(Ht)・赤血球数(RBC)の項目が必ず入っているので、自覚症状が無くてもその値に異常値があれば原因を探る必要があります。

自営業や自由業で定期健診が無い人は、日頃から献血を利用するのもおススメです。簡易検査があり、採血間隔もきちんと決まっているので献血が原因で貧血になる事はありません。

一部献血が出来ない人もいますが、問診で調べてきちんと丁寧に教えてくれます。

もし献血が出来たら後日無料でその成分を郵送で送って知らせてくれるので、採血検査を無料で受ける事ができる訳です。ほかにもメリットがあるのでぜひ利用してみてください。

そして、鉄欠乏性貧血が判明したらまずは食生活の改善が必須条件。今はサプリメントや栄養補助食品も沢山あるので、それらも上手く利用しつつベースの食生活の改善を図りましょう!

食事回数の少ない人はそれもリスク要因。おやつのタイミングで鉄分の多い間食を取り入れるなどの工夫が欲しいです。

吸収しやすい「ヘム鉄」(動物性)の摂取や、鉄の吸収率を上げてくれるビタミンを合わせて摂取し、無駄なく効率よく摂取できるのが理想的。「非ヘム鉄」のほうれん草を沢山食べる…だけでは継続困難、もしくは効果がさほど期待出来ないかも知れません。

そして、鉄分摂取でも改善しない・異常値の逸脱レベルが高い・他の採血項目にも異常値がある・症状が重い・最近急に症状が出始めた・食生活に問題が無い男性の異常値、などはやはり速やかな受診が必要です。

それらは身体のどこかで知らず知らず出血を起こしている可能性を示しているので、その解明のために検査が必要になります。

 

低血圧と貧血は似て非なるものですが、気付かず静かに進行し、身体がその慢性状態に慣れてしまいやすい事もやはり似ています。

身体のSOSを見逃さないようにして下さいね。

 

 

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